大阪高等裁判所 昭和28年(う)836号 判決
物品税法は同法第一条第一項及び同項に基く物品税法施行規則の別表(課税物品表)掲記の物品が国民の生活物資にして商品として取引の対象となる以上その流通の過程において製造場から移出せられる段階を捉えてこれに課税することを目的とする物品税創設の趣旨に鑑み、ヅルチンについても他の物品と同じく、特に規格及び品質につき何等の規定を設けなかつたものと解すべく、従つて日本薬局方に登載された規格及び品質に適合しない組悪品であつても、製造者においてヅルチンとして取引する意図の下に製造したものである限り、物品税の課税対象となるものといわなければならない。けだし薬事法は医薬品の強度、品質及び純度の適正を図るため日本薬局方等の発行公布を命じこれに定める基準に適合しないものの製造販売等を禁止しているのであるから(同法第三〇条参照)品質等の粗悪なヅルチンは医薬品として製造することは同法によつて規整せられることになるけれども、物品税法は国家の歳入としての租税の徴収を目的とするものであつて、奢侈品や粗悪品の製造の禁止をその直接の目的とするものではない。所論援用にかかる国税局の通牒は前示解釈を左右すべき資料となすに足りない。なお所論は二重課税を云為するけれども、原料として移出する場合には物品税法第一二条第一項により免税せられる途が開かれているのであるから、必ずしも二重課税の虞はないのである。
しかして原判決が「本件はいわゆるヅルチンとして取引せられ、粗悪原料として取引せられたものでない」と判示したのは挙示の証拠を綜合して右の事実を認定したものであることが明らかであり、記録を精査しても右の認定が誤つていることを首肯するに足りない。ただ「規格品には該当しないとしても取引上これと同様に取扱われるにおいては、物品税法の精神に照らしこれをヅルチンの製造と看做すべきである」と説示したのは、措辞いささか妥当を欠く憾があるけれども、その言わんとするところは前段説示の当裁判所の見解と同趣旨に帰するものと解せられないことはないのである。これを要するに所論は独自の見解に基くものであつて、採用できない。